【インタビュー】鉄道業界の今後を支えていく皆さんへのメッセージ
鉄道科
千葉県千葉市にある国際トラベル・ホテル・ブライダル専門学校(ITHB)の鉄道科では、業界出身の先生方による少人数授業やJR東日本での企業実習、銚子電気鉄道や小湊鐵道といった地元企業とのコラボ授業を実施しています。実践的な知識や経験を身につけてもらい、鉄道業界の未来を担う人材を送り出すのに理想的な環境が整っているのです。
去る2022年11月22日には、JR五井駅(千葉県市原市)の副長を務める橋口 広志さんをお招きした特別講演会を開催しました。今回の記事では、講演会当日に実施した橋口さんへの単独インタビューをお届けします。JR東日本のような鉄道会社への就職を目指す方にとって、ヒントになる言葉が盛りだくさんですよ。
※インタビュー中は撮影のためマスクを外しています
1976年生まれ、千葉県出身。テーマパーク業界などを経て、2006年に東日本旅客鉄道株式会社に入社。木更津駅(千葉県木更津市)、大網駅(千葉県大網白里市)、総合研修センター(福島県白河市)、千葉支社営業部(千葉県千葉市)で勤務したのち、2020年に五井駅の副長に就任。
――本日はよろしくお願いいたします! 橋口さんは、もともと鉄道や列車がお好きでJR東日本に入社されたのでしょうか?
橋口さん「小さいころから列車を見るのは好きでしたが、将来的に自分が鉄道業界を仕事として選ぶイメージまでは湧いていませんでした。実際、私が最初に就職したのはテーマパーク業界ですからね。そこで学んだノウハウはテーマパーク以外の業界でも活かせると考え、JR東日本に転職することになったのです」
――なるほど。橋口さんも含め、JR東日本には意外と鉄道マニアが少ない……?
橋口さん「そうかもしれません(笑)。とはいえ鉄道マニアの社員も、そうでない社員も、会社には両方必要だと思います。例えばマニア向けのツアーを企画するときは、何を用意したら喜んでくれるかという心理を理解できていないといけませんよね。一方、もし収益面を考えるとなったら、マニアでないほうが物事を冷静に見られることでしょう」
JR東日本の駅での仕事内容と、鉄道業界に就職したい方へのアドバイス
――橋口さんが副長を務めるJR五井駅では、具体的にどのような業務を行っていらっしゃるのでしょうか?
橋口さん「社員たちが24時間体制で日々行う業務と、年間のうちに行う業務の2種類に大きく分かれています。
日々行う業務(一例) | 年間のうちに行う業務(一例) |
●切符の販売・精算 ●お客さまのご案内(周辺案内・車椅子ご利用の方等のご案内など) ●お忘れ物対応・登録 ●駅の営業開始・終了準備 ●締切(売上金の回収・まとめ) ●駅の清掃 ●駅の機器の確認(エレベーターやエスカレーター) |
●ダイヤ改正 ●草刈り(浜野駅~姉ヶ崎駅間の11.7km) ●訓練 ●会議(安全、営業制度、サービス、ESGなど) ●企画業務(コトづくり) 例:他社とのコラボ企画 (中村学園と小湊鉄道との焼菓子販売など) |
私個人(副長)の役割としては、社員の管理業務が主ですね。一人ひとりの社員と、それぞれの特徴や強み・弱みについて話し合いながら、どういう目標を立ててステップアップしていこうか一緒に考えていく仕事です。ほかには、その日の駅の責任者(当務駅長)を任されることもありますし、一般の社員とともに人身事故などのトラブル対応にもあたります」
――では、ここからは鉄道業界志望者へのアドバイスをお伺いできればと思います。就職活動では、どういった資格を取って自己アピールすればよいのでしょうか?
橋口さん「何かの資格を持っていないから就職活動で不利になる、ということは私の周りでは聞いたことがありません。せっかく就職前に資格を取るのであれば、入社後に私はどのような仕事がしたいのか? その仕事のスキルを高めるために必要な資格は何か? という自分のキャリアを意識した資格の勉強をする方が良いと思います。
でも、学生時代は自分がどのような仕事がしたいのかを見つけることは難しいですよね。そのため、資格取得を目指すよりも自分の特徴(強み)が何かを真剣に考えることの方が、学生時代は大切かなと私は思います。これまでの学生生活(部活や学園祭等)やアルバイト等を通じて、自分はどのようなことをしている時が真剣だったか? 熱中できたか? を考えると良いかもしれません。
また、何事にもチャレンジする気持ちも大切です。学生時代に、苦労や失敗をしたことがあれば尚良いと思います。なぜならば、苦労や失敗は経験値が付き、その人を成長させるからです。
新型コロナウイルスや在宅勤務などの働き方改革等、ここ数年で世の中の環境が大きく変わり、世の中の変化に合わせて自らも変わっていく(何事も考えてチャレンジする)ことが求められています。今のうちに色々なことをチャレンジすることは社会人に向けての良い準備になると思います」
鉄道業界の仕事の魅力と、業界の今後を支えていく方々へのメッセージ
――最後に、鉄道業界で働くうえでのやりがいをお聞かせください。
橋口さん「私が今でも覚えているのが、2011年に東日本大震災の影響で運休していた秋田新幹線が、ようやく全線復旧した日のことです。沿線の方々が自発的に集まって一番列車に手を振るというプロジェクトがあり、なかには泣いている方もいらっしゃいました……。私たちはレールをつなぐのではなく、人と人をつなぐ仕事をしているのだと実感しましたね。
コロナ禍で減少したお客さまのご利用は、以前の水準に自然と戻ることはないと考えていますが、通勤・通学以外でどのように鉄道を利用していただくかが今後の課題の一つです。千葉県は、都心部から日帰り圏内で里山の雰囲気を見に行ける立地ですし、海の幸などの魅力的な素材も揃っています。どう工夫すれば県外の方を呼べそうか考えるのも、私たちの仕事の楽しいところです。
専門学校に通っている、または通おうか検討中の皆さんに伝えたいのは『社会人としての基礎を作って挑戦し、そして失敗しなさい』ということです。挑戦すれば失敗は必ずつきまといますが、若いうちに失敗しないと人は強くなれません。ITHBでは企業と連携した校外学習が充実しており、生徒一人ひとりの意欲を高めていく授業をしていると聞きました。経験値を積んで不安に慣れ、次の行動を起こすための自信を持ち、自分の特徴や強みを見つけてください!」
――本日はどうもありがとうございました!
ITHBには鉄道科を含む6つの学科がありますが、いずれの学科も、橋口さんのような現役の業界人と接するチャンスに恵まれています。憧れの業界へと一歩踏み出してみたくなった方は、まず一度オープンキャンパスにどうぞ!